元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
そして、初めての表舞台。朝から私はそわそわとしていた。だって、これはデビュタント以来なんだもの。そうなるに決まってるじゃん。
それと、緊張もしてる。デビュタントとは違って私は大公家の夫人。そして結婚してすぐだから注目されるはず。
……大丈夫、だよね。
「マジで似合ってるわ。最高」
「……さっさと行きましょう」
通常運転のエヴァンのおかげで肩の力が抜けたかもしれない。
けど、さ。エヴァンかっこよ。何このイケメン。着飾ったらもっとカッコよくなったわ。まぁ、タキシードもカッコよかったけどさ。
「さ、お手をどうぞ、奥さん」
「……」
「なになに、照れちゃった? テトラちゃ〜ん?」
はい、その態度でお願いします。これで中身も紳士だったら私ヤバいかもしれない。
とりあえず、このノリでいこう。そっちの方が気楽でいけそう。流石に他の人がいる時はダメだけどさ。
今日は、王城での夜のパーティーである。王妃殿下が主催者だ。
何でも、エヴァンがお願いしたらしい。王妃主催なら参加しないといけないパーティーだからだ。
うちに来る招待状は上位貴族のご令嬢やご夫人ばかりであり、ほぼ貴族派の家のもの。私は大公夫人だから、どのパーティーに出るかも注目されるのだとか。というか、すぐに社交界で噂になるらしい。
そんなんだったら王妃殿下が主催してくれた方がいい、ということでお願いしたらしい。
だいぶ久しぶりのパーティーだから……
「……わぁ」
デビュタントはこの王城でのパーティーだった。だから大丈夫だろ、と思ったんだけど……何じゃこれ。
「……こんなに招待客がいるものですか」
「招待したのは少なくても、お前が来ると小耳に挟めば招待客に付いてくるやつはいるだろ」
それでこの人数……どんだけ私を見に来たのよ。めっちゃ緊張する。
「エヴァン、絶対に私から離れないでくださいね」
「おやおや、怖気付いたか?」
「ここは戦場ですよ。死にたくはありません」
「あははっ、戦場か! まっ、間違ってはないな。んじゃ、戦闘不能にされないよう気合い入れていくか」
「は、はい……」
生きて帰れるだろうか、私は。
このいくつも集まってくる視線が痛い。しらーっとした顔のエヴァンはどんだけの鉄の心臓をお持ちなのだろうか。私にも分けてくれ。
とりあえず、主催者の王妃殿下にさっさと挨拶をしてしまおう。そう思いきょろきょろしていると、あっちだとエヴァンに連れてってもらった。意外と近くにいたみたい。
「王妃殿下にご挨拶申し上げます。ごきげんよう。本日はご招待いただきありがとうございます」
「えぇ、来てくれてありがとう。あれからどう? 生活には慣れたかしら。この子になにもされてない?」
「えっ、あの……旦那様のおかげで、充実した生活を送らせていただいてます……?」
「ふふっ、可愛らしいわね。やっぱりあなたにはもったいないんじゃない?」
「はぁ、殿下」
結婚式でも思ったけれど、王妃殿下って本当に若い。一体おいくつなんだろう。国王陛下は大体60後半くらいだけど、王妃殿下は見たところ30代くらい。まさかの歳の差婚?
そうして、殿下が呼ばれて会話が終わり、ミッションクリアとなった。