元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

「……そんなもの、貴族の風上にも置けないじゃない」

「どうしてそう思うの? ノブレス・オブリージュ。身分の高い者は、それに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある。領民達を守る事も、その内の一つよ。その時の当主は、その義務を果たした。それのどこが悪いの?」

「それはっ……」


 私は、当時の当主の選択は正しかったと思う。全然運はないけれど、縁はあった。当主と、先代達の(おこな)いの良さでこうして残っていけたってことだ。


「先代様達の努力のおかげで今、大公様との結婚話が私に来て、そして今レブロン子爵領は豊かになってきてる。先代様達はこれでようやく努力が実ったということかしらね」

「そ、そんなの……」


 私の長い話に、周りのご令嬢達は何も言えなくなってしまっている。まぁ、ご令嬢達は政治とかこういう話とかは(うと)いみたいだし、難しかったかしら。


「候補にあった、と言っていたけれど……お父様に王族派になって、ってお願いしていれば夫人になれたかもしれないわね?」


 わなわなと肩を震わせて黙っていたルイシア嬢。私がそれを言い出したら、彼女は怖い顔をしていた。そして……


「っ……貧乏貴族のくせにっ!!」


 近くのテーブルにあったグラスを持ち私の近くまで来て、思いっきり私にぶっかけた。

 さっきまでいい子ぶってたけど、これが本性、ってやつかしら。

 私もぶっかけ返すか? とも思ったけれど、私はこの子達より身分が上だ。だからそれはやめておこう。あとでトマ夫人に怒られる。


「あら、ルイシア嬢。気に入らない女性には、たとえ自分より身分が上だったとしても水をかけてもいいって教育係に教えてもらったのかしら。この国唯一の大公家の夫人の候補だったのでしょう?」

「っ……」


 ぶっかけ返しはしないけれど、でもやられっぱなしは癪に障るわ。


「私、まだ上位貴族のマナーというものがよく分かってなかったみたいね。今度、王妃殿下にでも聞いてみましょうか?」

「なっ……!?」

「……可愛いお嬢さん方、貧乏貧乏言うけれど、もしかしたらあなた方も貧乏生活を味わうことになるかもしれないわよ?」

「そ、そんな事……」

「あるわけがない、と言いたいのかしら。でもね、この世に『絶対』はないの。明日どうなるかは神のみぞ知る事。もしかしたら隣国の影響で家が大打撃を受けるかもしれない、大災害で領地に影響があるかもしれない。そしたら、ずっとしてきた生活が出来なくなってしまうかもしれないわ。そうなったら、あなた達はどうする? 働く?」

「そんなの……」

「領民達に働かせる? それとも使用人に? でもね、お金を持っていない人のために働いてくれる人なんていないの。タダ働きなんてしてるんだったら自分達が生きるために早く新しい働き口を探す方がずっとマシよ。生活がかかってるんだから」


 こんな話、聞かされたことなんてないでしょうね。でも、これが現実なのよ。


「でも、そうね。助けてくれる人はいるかもしれないわね? まぁ、ご縁があればだけれど。この家の人には前に助けてもらったから、この家のご令嬢はとてもいい子だから、なんて理由で助けてくれるかもしれないわ」


 そして、私は最後にこう言った。


「だから、誰かに喧嘩売ってるよりも、日頃の行いを見直すことをお勧めするわ。いつ不運が回ってくるか分からないもの」

「っ!?」

「ね?」


 これは、半分脅しでもある。私に喧嘩を売ったらどうなるか分からないぞ、という脅しだ。私はこの国の大公夫人。権力を使えば家を潰す事だって出来るのだ。犯罪? まぁ、そうならないための手段はいくつもあるってこの前エヴァンから聞いたけどね。ほら、とある商会を木っ端微塵にした時に聞いたの。

 だから、お利口さんにしていた方がいいわよ、って事。
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