元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
◇27
煌びやかな王城の、とあるホール。そこでは国王主催のパーティーが行われていた。
色々あってドレスが汚くなってしまったけれど、仕方ないね。
「さっ、行くか」
「はいっ!」
きっと何か言われてしまうと思ったけれど、でもエヴァンと一緒ならぜーんぜん怖くない。
そして、会場に続くドアを潜った。
明るい光が照らされ、そして周りの視線も浴びせられる。こんなに遅い参加にきっと疑問に思っている人もいるだろう。
そして、真っ直ぐに国王陛下の元へ。
「国王陛下、王妃殿下にご挨拶申し上げます」
「ごきげんよう」
「あぁ。だいぶ遅かったな。何があったのだ」
「私の妻が誘拐されてしまいましてね」
誘拐、という言葉で周りはざわざわと騒ぎ始める。まぁ、私のこの姿を見て信じてくれる人は何人かいるだろう。
「幸い、怪我もなく早く見つける事が出来ました。それで、面白いものを見つけましてね」
「面白いもの、とは」
笑顔で懐から取り出したのは、さっき私が見つけた書類だ。左上の端を留めて二枚重ねになっている。
そして、ビリッと一枚ずつにしてしまったのだ。それ、証拠の品でしょ。いいの?
「これ、一枚目を横にして右端を揃えて明かりに照らすと……あらあらびっくり何という事でしょう、どこかの家紋が出てくるではありませんか」
ニヤァ、とした顔をしているエヴァンは、何とも恐ろしく感じた。そして、それを国王陛下に手渡した。
「ほぉ、確かに面白い」
「何でも屋によくある仕掛けですね。依頼主を記しつつも巧妙に隠すのは」
「この家紋はよく見た事がある。これは……サリサス伯爵家の家紋だ」
その国王の言葉に、周りはとある人物三人に視線を移した。その人物達は、内二人は慌て、そして一人は青ざめている。これを見れば、誰の仕業か分かりきっている。
「てめぇ、やってくれたな」
「取り押さえよっ!!」
陛下の一声で、子爵家の者3人が衛兵によって取り押さえられたのだ。
「わっ私は違うっ!! レティート夫人に頼まれたのよっ!!」
そう言い出したのは、取り押さえている者の一人、伯爵家のご令嬢だ。そしてこの人は、あのルイシア嬢が催したガーデンパーティーに参加していた一人だ。
レティート夫人というと……公爵家の夫人だったか。周りは夫人からそーっと離れる。