ぽっちゃり年上保育士に心の底から癒されたい
「結羽先生、旅館に行ったことないんですか?」
「ないですねぇ…」
「修学旅行は?」
「ホテルでバイキング形式だったと思いますよ」
バイキングか、なるほど
「こんなに小鉢を用意するの大変じゃないですか?」
「私の場合、下ごしらえをあらかじめしておいて冷凍したりしてるのでそうでもないんですよ」
独り暮らしで大きな冷凍庫を使うなんて中々ないですよねと恥ずかしながら話してくれた。
田舎は買い物に中々行けないから業務用の冷凍庫が家にありますと笑って答えてくれた。
「いいなぁ…」
「えっ?」
「僕、家庭の味を知らなくて…」
「えーと、ごめんなさい、何て言っていいのか…」
「あー、すみません、両親はいます」
「そうなんですね」
どういう事かわからないけどあまり家族の事を聞いてもだめだよねと結羽は聞くのをやめた。
「あー、旨すぎる…」
優は味噌汁を飲み干すと「何か…こういうのが幸せって事ですかね?」
「うーん、私には日常なんですが」
ご馳走様と言ってお箸をおいた。
「僕、今幸せってマジで思いました」
「こんな田舎料理を褒めてくれてありがとうございます!」
結羽も手を合わせてご馳走様と言った。
「あの、結羽先生?」
「はい?」
「1人でもいただきますとかご馳走様とかを言うタイプですか?」
「言います…恥ずかしい」
ぽっと柔らかそうなほっぺたが赤くなった。
「えー、可愛いんですけど(笑)」
いやいやと手を振って否定しながら食器を下げに行った。
優も後をついて流しに持っていき手伝った。
歯ブラシ借りますと優は下に降り、その間に結羽は着替えた。
優が2階に上がると窓が開いていて爽やかな風が吹いている。
「結羽先生」
「はい?」
「ゴールデンウィークのご予定は?」
「後半は田舎に帰る予定ですけど後は特に…」
「田舎かぁ…いいなぁ…行ってみたい」
「田舎すぎて本当に山と畑だけですよ(笑)」
「散歩するだけでも気持ちよさそうですね、あっ、そうだ結羽先生、何かやりたい事ありませんか?お世話になったのでどこか行きたい所とかないです?」
「行きたい所…ですか?」
結羽はしばらく考えていた。