ぽっちゃり年上保育士に心の底から癒されたい

テラス席から外を見ていると大きなエコバッグを左肩に抱え、右手にはエコバッグに入らなかったと思われるビニール袋を2つ持っている女性が歩いていた。

凄い買い物の量だなと見ていると右手のビニール袋の1つが裂けて商品が落ちてしまったのだ。

「あっ!」

思わず優は声を出してしまった。

「優、どうしたの?えっ、何?あの荷物の量、恥ずかしくないのかな」

彩心(あこ)はそう言うとパンケーキを口に入れた。


優は何故か席を立って5000円札をテーブルに置いて店を飛び出した。

「優、優ってばー、もうなんなの」


彩心を置いて彼女の所に行くと、肩に抱えていたエコバックをよいしょっとおろして、裂けたビニール袋を見る女性…

田畑結羽(たばたゆう)はバックの中を覗いてみた。

「あー、もう袋がないかぁ…エコバックの方に詰めて入れ直してみようかな」

ちょっと買いすぎたと反省をしていると

「あっ…リンゴが…」

リンゴだけ少し先に転がってしまった。

リンゴを拾おうと立ち上がると親切に拾ってくれる男性がいた。

「大丈夫ですか?」

優は声をかけたのだ。

「あっ、大丈夫です」

「そこにコンビニがあるのでビニール袋を買ってきますよ」

「えっ、いいんですか?」

「はい、少し待っていて下さい」

優はにっこりと笑うと「はい」と結羽にリンゴを渡した。

ありがとうございますと結羽は頭を深く下げた。

幸い道の端を歩いていたので歩く人の邪魔にはならなかったがそれでも道のギリギリまで荷物を移動させた。

「はい、どうぞ」

優が走ってビニール袋を2枚買ってきてくれて「助かります」とお礼を言うと財布を出した。

右手を1度ハンドタオルで拭き、百円を渡した。

「いいですよ、百円もしないので」

「ダメですよ、コンビニまで行ってくれたし、受け取ってください」

「わかりました、それより荷物を詰めましょうか」

「はい」

ビニール袋を重ねて買ったものを入れた。

「本当にありがとうございました」

もう一度深々と頭を下げると重たいエコバックを肩に載せて歩いて帰って行った。


両手いっぱいに荷物を持った少しぽっちゃりした女性の後ろ姿を優は見えなくなるまで目で追っていた。

顔も丸くてリンゴみたいだったな…
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