ぽっちゃり年上保育士に心の底から癒されたい
結羽はその紫音くんに寄って行くと泣き始めてしまったのだ。
えっ、結羽先生が泣いてる…
「グスッ…よかったねぇ、紫音くん、おいで」と両手を広げると1歩1歩ゆっくりと歩いて結羽の胸に飛び込んだ。
結羽先生は抱きしめて頭を撫でていた。
「千景先生、結羽先生はどうしてあんなに?」
「紫音くんはね、他の園児に比べて小さいのは見てわかるわよね?」
「はい、確かに…」
「中々つかまり立ちも出来なくて歩くのも出来なかった子なのよ」
確かに初日にうば車に乗っていた時に1人だけ座っていたのは優も気づいていた。
「少しずつ立つ練習をしていてね、お母さんからは結羽先生はすごく相談を受けていたのよ」
「それは発達障害の園に行くべきかどうかとかですか?」
「そうなの、結羽先生も色々資料も調べたりして、お母さんと寄り添っていたから自分で立てて、歩いたっていうのが嬉しかったと思うわ」
結羽先生は紫音くんの両手を持って一緒にヨチヨチと歩いていた。
結羽の目にはまだ涙があったが笑顔だった。
終業の時間になり職員室へ行くと結羽先生がいない…
優が探しているとちょうど紫音くんのお母さんが迎えに来ていた所だった。
園児は1部屋に集められていてコスモス組には紫音くんのお母さんと紫音くん、結羽の3人しかいなかった。
お母さんも嬉しそうに結羽に話している。
ぺこりと頭を下げて紫音くんを抱いて教室から出ていった。
優はお母さんとすれ違いに頭を下げ玄関で靴を履かせている姿を見た。
これからは、そっか、靴がいるんだな
優は教室を覗くと背中を向けていた結羽先生の側に行った。
いつも持っているハンドタオルは手を拭くんじゃなく今は涙を拭いていたのだ。
優はそっと後ろからハグをした。
「よかったですね、結羽先生」
結羽はうんうんと声を出さずに頷いていた。
そっとしておいた方がいいかもと、優はすぐに腕を離して職員室に戻りお疲れ様でしたと挨拶をして園を出た。
バス停で結羽に先に帰りますねとLINEを打ち、ちょうどやってきたバスで帰っていった。
バスを下りると結羽からお疲れ様でしたと返事がきていた。