ぽっちゃり年上保育士に心の底から癒されたい
9日目 山へ
朝起きて台所に顔をだすと卓も起きていた。
「あっ、おはようございます、先輩」
「おはよう、結羽先生、お母さん、おはようございます」
『おはようございます』
優が座ると朝ご飯が出てきた。
「この卵、今日烏骨鶏が卵産んでたので食べてみてください」
結羽先生が差し出してくれた。
「烏骨鶏の卵って高いんですよね?」
「そうですね、毎日は産まないので…是非、卵かけご飯で」
「いただきます」
少し小さめの卵を割ると鮮やかな黄身の色だった。
「うぉ!美味い!」
「美味いでしょ、朝、俺が取ってきたんで(笑)」
「卓、ありがとう、こんなの食べたことないや」
「でも先輩の家って金持ちですよね、高級な卵とか買ってたんじゃないんですか?」
「いや、金があってもうちの親は料理しないからな、それに産みたてなんて農家ならではだよ」
「えっ?」
「うちはつまんねぇ家庭だよ」
「優くん、聞いてもいい?」
「どうぞ、お母さん」
「学校行事とかは誰かは来てくれていたの?」
「あー、幼稚園から高校までストレートの学校で、幼稚園の面接は両親がいたような記憶はあります、どうしても親との面談とかは父がなんとか来てくれましたね」
「その…育児放棄とか?」
「仕事ですね、両親とも仕事人間なんです」
「まあ、農家も雨以外休みじゃないからなぁ」と卓が言った。
それからは話題は変わり今日の写真を撮りに行く場所を卓が説明をしていた。
支度を終えて優の車に乗りこみ3人は山に向かって行った。
三脚を立ててカメラを固定する。
「普通のカメラかと思ってました」
結羽がセッティングをしている優に声をかける。
「普通のもありますよ、はい、結羽先生はデジタルカメラ」と言って渡した。
「これ、何でも撮っていいんですか?」
「はい、何でも(笑)」
結羽はカメラを覗くとボタンを押した。
「え?山に来て僕を撮るんです?」
「あっ、押しちゃった?」
「多分」
優はカメラを返してもらい写真を見てみた。
「ブレてる(笑)」
結羽に見せた。
「わっ、本当ですね」
「デジカメでもボタン押す時に下にブレることありますからね」
結羽にカメラを渡して右手を添えた。
こうならないように…と腕を支える。