ぽっちゃり年上保育士に心の底から癒されたい
コスモス組さんはお昼前に大きなうば車に園児をのせて近くのお寺にお散歩に出かけた。
うば車を押す結羽は手袋をつけていた。
優は気になったが滑らない為かなと思いその時は特に聞くことはしなかった。
お散歩から園に戻ってからは自分でまだ上手に食べる事が出来ない乳幼児に給食を食べさせて、その後お昼寝をさせた。
「じょう先生」
危ない、ウトウトしてしまっていたようだ。
この時間に親にお手紙を書くらしい…
結羽を見るとペンを右手に持ち、左手は押さえる手が反対だった。
ん?結羽先生はどうして掌を上にして連絡帳を押さえているんだろう…
今日の気になった事の1つだった。
「じょう先生、ひとこと書いてください」と結羽から連絡帳が回ってくるが何故か1冊ずつハンドタオルで手を拭いてから渡してくる。
コスモス組の10人の連絡帳に実習生という事と、自分の名前を書いていく。
早く園児の名前と顔を覚えてくださいねと千景先生は優に言うと部屋から出ていったので優は思いきって聞いてみた。
「あの…僕は結羽先生の事、憶えてたんですけど、結羽先生は?」
「えっ!?」
丸い顔と丸い瞳が優の方を見た。
「私…じょう先生とどこかでお会いしましたか?」
顔も丸いが瞳も大きくてクリクリと目がびっくりしているのがわかる。
「先日、たくさんの買い物をして、ビニール袋が破れたでしょう?」
「な、何で知ってるんですか?」
「だってビニール袋を買いに行ったのは僕ですから」
「え、すみません!茶髪?だったような…顔はあまり見れてなくて」
結羽はうーんと顎に手を当てて一生懸命思い出そうとしている。
「確かに髪型は実習の為に黒に染めて切りましたね」
「すみません、本当に恥ずかしくて男性の顔を見れなくて…親切にして頂いたのに失礼しました」
「そうみたいですね、やっと目が合いました(笑)」
優が笑うと結羽は真っ赤になった。
「その節はお世話になりました」とペコペコと頭を下げる。
「いいんですよ、朝に会った時に気づいて欲しかったなぁって…僕はすぐわかったのに」
恥ずかしいと両手で顔を覆っていた。
クスクスと優は笑い、別にからかった訳じゃないので気にしないで下さいと言ったところに千景先生が戻ってきた。