ぽっちゃり年上保育士に心の底から癒されたい
「まずは食べよう、ゆっくり話すから」
「うん…」
「結羽さんは……」
黙っていたお母さんが話し始めた。
「自分の保育士という仕事に誇りをもっているのね」
「そんな重くは考えてないです」
「そうなの?」
「子供が好きでピアノも習っていたから最初はなんとなくでした、弟の世話もしてきましたし」
「今は?」
「保育士になって良かったと思います」
「それならいいわよ、でももし優の会社が上手くいかなかったとしたら?」
「え?」
「事業なんて何が起こるかわからない、その時に保育士の資格があって転職をするかもしれない、逆に結羽さんが現在、今の保育園を気に入っていても経営者が代わったら働きずらくなるかもしれない」
「はい」
「その時は結羽さんだって他の保育園を選ぶかもしれないし、保育士が嫌になって他の仕事を選ぶかもしれないでしょ?」
「…そうかもしれません」
「優が保育士を取るのは勉強の為だったかもしれないけど、もしかしたら将来役立つ事もある、少しの逃げ道の余裕があってもいいと思うのね、私は」
「おっしゃる通りです」
「母さん、一気に言いすぎだよ」
「あっ、私ったらまた悪い癖が…結羽さんごめんなさい、責めている訳じゃないの、こういう性格というか……1度喋り出すと止まらないというか」
「もう、だから僕に誤解されるんだよ」
「ごめんなさい、反省してます」
「まだ僕達はお互いの事を知らなすぎるんだよ」
「そうね、ごめんね優くん」
結羽はバックからハンカチを出して手を拭いていた。
「帰国してから初めて会ったんだよ、まだ話せてないんだから2人とも焦りすぎなんだよ」
「帰国した時に会わないと無理だろう」
「そうだけどさ、結羽ちゃんごめんね」
「ううん、私もパニックになってごめんなさい」
「まず食事をしよう」
優くんのお父さんが結羽にビールを注いでくれた。
「結羽ちゃん、日本酒呑む?」
「ビールでいいよ、大丈夫」
「日本酒が呑めるの?」
お母さんが聞いてきた。
「はい、冷酒が好きなんです」
「私も呑みたいわ、ねぇ、頼みましょ」
「……優くん、どうしよう」
結羽が小声で聞いた。
「大丈夫、量を見ておくよ」
「本当?ちゃんと止めてね」
「うん」
優が冷酒を注文した。