捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
3.裏切り
最近ソレイユの売上が落ちてきた。毎日頑張っているけれど、代わり映えしないのがいけないのだろうか。売上を計算して現実を突きつけられると、一気に気持ちはしんどくなる。

重たい気持ちのまま帰宅して、たまった家事を一人でこなす。そうしてようやく一息ついたところで、雄一に売上の話をした。

「はあ?売上?なんで落ちるんだよ」
「わからないけど、今月苦しいかも」
「お前の腕が落ちたんじゃねーの?俺なわけねーし」

さらっと酷いことを言ってくるけれど、唇を噛んでやり過ごした。こんな風に馬鹿にされるのは日常茶飯事だ。悔しいけれど言い返すと何倍にもなって返ってくるので私は黙る。すると、ソファでのんびりテレビを見ていた雄一が「なあ」と話しかけてきた。

「莉子、結婚の話、そろそろ進めようか」
「えっ、あ、結婚?」

予想だにしていなかった結婚の話にドキリと心臓が揺れた。
私は雄一の浮気を疑っているし、何一つ解決していない。それに彼は常日頃、私を馬鹿にしてばかりだ。そんな相手と結婚なんて考えられるはずもない。

けれど私の意見など最初から聞く気のない雄一は、勝手に一人で話を進める。

「それで提案なんだけどさ、ソレイユの土地を売って、別の場所に新しいカフェをオープンさせないか?」
「えっ……?」

ソレイユを売る?
新しいカフェにする?

言っている意味が理解できなくて、頭の中が混乱する。

「ど、どうしてそうなるの?」
「ソレイユはもうだいぶ古いだろ。時代にそぐわないよ。それにあの土地は売ったらかなり良い値が付く。その金で新しいカフェを建てることなんてわけないだろう?」
「ありえないよ。ソレイユは大事な場所だもの。それは雄一だってわかってるでしょう?私がどんな想いで店を継いだか……」
「それは俺がいたからできたことだろう? お前ひとりで何ができた?」
「それは……」

確かに、ひとりではソレイユを継ぐことは難しかったかもしれない。雄一がいてくれたからこそ、ちゃんと軌道に乗れたんだと思う。

だけどそれとこれは話が違う。
だからって、どうしてソレイユを売ることになるのか。
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