捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
「だから、ずっと莉子さんに申し訳なくて……。でもどうすることもできなくて、流されちゃってました。本当にごめんなさい」

ああ、頭が混乱する。頭が痛い。
桃香ちゃんは雄一と一緒になって私の悪口を言っていた。それなのに、本当は雄一に脅されていたから、彼の言いなりになっていたってことなんだろうか。

何が正しいの……?
桃香ちゃんの言っていることは本当?
それとも嘘をついている?

「私、ソレイユを辞めたくありません」

ついに桃香ちゃんの大きな瞳からぽろりと雫がこぼれ落ちた。

悲痛な面持ちで訴えられ、私は困惑してしまった。
だって、私は一体何を信じたらいいのか、わからないもの。

桃香ちゃんが嘘をついているかもしれない。でも雄一が脅していたというのはあり得る話だ。現に私がそうされてきたのだから。もし、桃香ちゃんも私と同じように苦しんでいるのだとしたら……? だったら助けてあげるべきなのかな――

「桃香ちゃん、あの……」
「莉子さん、私と手を組みませんか?」
「え……?」
「このままでは雄一さんにソレイユを乗っ取られるかもしれません。私と莉子さんでソレイユを守るんです」

ゴクリ、と喉が鳴った。
桃香ちゃんは「本気です」と眼力強く、私を見つめる。

気持ちが揺れる。
私の願いはただひとつ、ソレイユを守りたいということ。だから、桃香ちゃんの提案は悪くないと思った。でも――

――莉子ちゃん、優しさとお人好しは似ているけど全然違うものなの。時には厳しくでいいのよ。

いつかの千景さんの言葉が頭をよぎった。

肝に銘じなければと思いつつ、結局のところ私はどう答えたらいいかわからず、固まっていた。
手持ち無沙汰に飲んだカフェオレは、すでに冷え切って、いくら飲んでもやはり苦さしか感じられなかった。
< 50 / 98 >

この作品をシェア

pagetop