捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
好きな人と結婚できるのは嬉しい。
でもこの結婚は利害の一致婚なんだ。
私はソレイユを守るため。
穂高さんはステータスを手に入れるため。
そのための、偽装結婚。
そこに愛は存在しない。
いくら私が穂高さんを好きでも、穂高さんは結婚の責任として私に優しくしてくれるだけ。その事実が、こんなにもつらいなんて思わなかった。これから結婚するのに、ずっと片想いをしなくちゃいけないなんて……。
人を好きになるって、こんなにも苦しいことだったんだ。こんな気持ち、経験したことがなくてどうしたらいいかわからなくなる。どうして今、気づいてしまったんだろう。できることならこの気持ちに気づかずに、過ごしていたかったな。
穂高さんの胸の中は温かい。包んでくれるその優しさは慈愛からくるものだろうけど、安心する。いつか私のことを好きになってくれたらいいのに。
穂高さん……。
私、あなたのことが好きです。
「莉子さん」
「ん……」
「大丈夫?少し熱があるんじゃ……?」
穂高さんが私のおでこに手を当てる。ひんやりとした穂高さんの手が頬を触り、首筋を触る。気持ちが良くてその手に頭をもたげた。
「大丈夫ですよ」
「どこが大丈夫なんだ。無理をしすぎだよ。あとは俺に任せて、莉子さんは休んで」
「でも……」
「いいから」
急にふわっと浮き上がった体にびっくりして穂高さんにしがみついた。だけどそれは穂高さんにお姫様抱っこされていたからで……。
そのまま穂高さんのベッドへ運ばれてしまった。昨日もお借りしたベッド。今日は絶対に穂高さんにベッドで寝てもらおうと思っていたのに、まさかまた私がここで寝るなんて。
「何か食べる?夕飯食べてないだろ?」
「カフェオレを飲みました」
「それは夕飯とは言わないよ」
穂高さんは困ったように笑うと、「ちょっと待ってて」と寝室を出ていった。
しん、と静まり返る部屋。
なんて情けないんだろうと、私は両手で顔を覆う。
昨日も今日も、穂高さんに迷惑をかけてしまった。私は迷惑をかけたくないと思っているのに、なぜだかそれが裏目に出ている。
「ほんと……情けないなぁ」
行き場をなくした私を助けてくれた穂高さんに恩返しがしたいのに、まさか熱まで出してしまうなんて。頭が痛いのは雄一と桃香ちゃんのことを考えているからだと思っていた。体が痛いのは雄一に蹴られたからだと思っていた。どうやら違ったみたいだ。
熱があるとわかったとたん、急にダルさが波のように押し寄せてきて体が重くなった。布団をたぐり寄せて顔を埋める。ほんのりと香るシトラスの香りにすうっと意識が持って行かれた。
でもこの結婚は利害の一致婚なんだ。
私はソレイユを守るため。
穂高さんはステータスを手に入れるため。
そのための、偽装結婚。
そこに愛は存在しない。
いくら私が穂高さんを好きでも、穂高さんは結婚の責任として私に優しくしてくれるだけ。その事実が、こんなにもつらいなんて思わなかった。これから結婚するのに、ずっと片想いをしなくちゃいけないなんて……。
人を好きになるって、こんなにも苦しいことだったんだ。こんな気持ち、経験したことがなくてどうしたらいいかわからなくなる。どうして今、気づいてしまったんだろう。できることならこの気持ちに気づかずに、過ごしていたかったな。
穂高さんの胸の中は温かい。包んでくれるその優しさは慈愛からくるものだろうけど、安心する。いつか私のことを好きになってくれたらいいのに。
穂高さん……。
私、あなたのことが好きです。
「莉子さん」
「ん……」
「大丈夫?少し熱があるんじゃ……?」
穂高さんが私のおでこに手を当てる。ひんやりとした穂高さんの手が頬を触り、首筋を触る。気持ちが良くてその手に頭をもたげた。
「大丈夫ですよ」
「どこが大丈夫なんだ。無理をしすぎだよ。あとは俺に任せて、莉子さんは休んで」
「でも……」
「いいから」
急にふわっと浮き上がった体にびっくりして穂高さんにしがみついた。だけどそれは穂高さんにお姫様抱っこされていたからで……。
そのまま穂高さんのベッドへ運ばれてしまった。昨日もお借りしたベッド。今日は絶対に穂高さんにベッドで寝てもらおうと思っていたのに、まさかまた私がここで寝るなんて。
「何か食べる?夕飯食べてないだろ?」
「カフェオレを飲みました」
「それは夕飯とは言わないよ」
穂高さんは困ったように笑うと、「ちょっと待ってて」と寝室を出ていった。
しん、と静まり返る部屋。
なんて情けないんだろうと、私は両手で顔を覆う。
昨日も今日も、穂高さんに迷惑をかけてしまった。私は迷惑をかけたくないと思っているのに、なぜだかそれが裏目に出ている。
「ほんと……情けないなぁ」
行き場をなくした私を助けてくれた穂高さんに恩返しがしたいのに、まさか熱まで出してしまうなんて。頭が痛いのは雄一と桃香ちゃんのことを考えているからだと思っていた。体が痛いのは雄一に蹴られたからだと思っていた。どうやら違ったみたいだ。
熱があるとわかったとたん、急にダルさが波のように押し寄せてきて体が重くなった。布団をたぐり寄せて顔を埋める。ほんのりと香るシトラスの香りにすうっと意識が持って行かれた。