捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
「桃香ちゃん、お客様のことを詮索しちゃだめだよ。もし桃香ちゃんがそう思っているんだとしても、仕事中にそれを口に出してはだめ。もし何か不満があるなら、桃香ちゃんが働きやすくなるように改善していくから、あとで教えてくれる?」
「あー、はい。ありがとうございます。別に不満なんてないです。ほんと、莉子さんって良い人ですね」

桃香ちゃんは可愛い笑顔でニコリと微笑みつつ、何でもなかったかのように仕事に戻る。その態度は後腐れがないようにも見えたけれど、ほんの少しだけ私の心にしこりを残した。

従業員の教育って難しい。でもソレイユのオーナーとしてちゃんとしなくちゃいけない。人に注意するのってすごく勇気がいるけど、言わなくちゃいけないときもある。

まだまだ私も未熟なところが多くて、お客様に助けてもらうこともある。ありがたいけれどそれに甘えてばかりではいけないのだ。もっと頑張って、ソレイユを盛り上げていかなくちゃ。

決意も新たに、カフェタイムに向けて簡単な掃除やメニューの入れ替えなどを行っていく。ゆったりとしたBGMが耳に心地良い。暖かな日差しも窓から差し込む。少しブラインドを下げたほうがいいだろうか。

キッチンでは雄一と桃香ちゃんが楽しそうに談笑している。別に大声ではないし、今は忙しくもないからいいんだけど……。

それでも何だかモヤリとしたものが心に渦巻く。
この気持ちは何なのだろう。

雄一に対して?
桃香ちゃんに対して?

答えが見つからないままカフェタイムに突入し、その後は仕事に追われて考える余裕はなくなった。
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