捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
外はカラッと晴れていて気持ちがいい。淀んでいた心も少しばかり晴れていくみたい。洗ったシーツは夜までに乾くだろうな。

近くを流れる川にはカルガモが気持ちよさそうに泳いでいる。まわりの木々は葉が赤やオレンジに色づき始めて季節が移ろいでいく。こんな風に、まわりをゆっくり見ることはずいぶんと久しぶりだ。

ずっとソレイユの経営に全力だった日々。
雄一に支配されていた日々。

それらすべてから解放されて、ふっと肩の荷が下りたような、そんな気分だ。それがいいのか、悪いのか、よくわからない。ソレイユを守りたいという気持ちは変わっていないからだ。

でも、少なくとも雄一から離れられたことは良いことなんだろうなと思う。だってこうやって昼間に何の気兼ねもなくゆっくり買い物に出掛けられるのだから。

穂高さんは夜まで仕事をするとメッセージが入っていた。一人で帰らせてごめんと謝られたけれど、謝りたいのは私の方だ。雄一と桃香ちゃんのことを最後まで対応してくれるのだから、頭が下がる。

詳しくはあの場では語られなかった。雄一も桃香ちゃんも、お互いが相手を騙していて、ソレイユの土地を狙っていたということはわかったけれど。三隅新太との関係とかも、よくわからなかったし。

でもそれらも穂高さんは調べがついているみたいだった。なんなら千景さんも、探偵みたいだった。眼鏡までかけちゃって、「どう? 様になってたでしょ。これ老眼鏡だけどね」なんて後から笑っていたっけ。

何も知らなかったのは私だけ。みんなに守られて、世間知らずもいいところだ。本当に情けない。何か恩返しがしたいのだけど、何がいいんだろう。穂高さんにも千景さんにも。

そんなことを考えながら歩いていたら、あっという間にスーパーに着いた。

そういえば穂高さんは何が好きなんだろう。嫌いな食べ物はあるのかな? ソレイユで日替わりランチを注文してくれる時はいつも残さず食べてくれていたけれど。
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