捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
「あれ?莉子ちゃん?」
「え?」

不意に声をかけられてそちらを見る。そこには買い物カゴを片手に持った、専門学校時代の同級生である吉永結愛《よしながゆめ》ちゃんが立っていた。結愛ちゃんは先日私にソレイユの口コミのことを教えてくれた友人だ。

「わあ、結愛ちゃん!」
「やっぱり莉子ちゃんだ。こんなところでどうしたの? 今日は休み?」
「あ、うん。結愛ちゃんこそ」
「私も休みなの。まさかこんなところで会うなんて。莉子ちゃんちってこの辺だっけ?」
「えっと……最近引っ越してきて」
「そうだったんだ。あ、ねえ、今から時間ある?よかったらランチしない?」
「ランチ?わあ、いいね!」

時間はちょうどお昼時。穂高さんが帰ってくるのは夜だし、買い物も後回しにして、私は結愛ちゃんと外に出た。

友達とランチなんて久しくしていない。ソレイユを継いでからは忙しくてそんな時間なかったし、なにより雄一の束縛が激しくて友達と会うなんてことは許されなかった。だから本当に久しぶりで心が弾んでいるのがわかる。

でも、お仕事中の穂高さんに内緒でランチに行くのもよくないかな? 怒られたりするだろうか。ちゃんと連絡しておいたほうがいいのかも。

「結愛ちゃん、ちょっとごめん。メッセージだけ送ってもいい?」
「うん、もちろん」

断りを入れてからささっとメッセージを送る。

【すみませんが、友達とランチに行ってきます】

するとすぐに返事が返ってきて、【楽しんでおいで】と言葉と共に、可愛らしいうさぎが手を振っていってらっしゃいと言っているスタンプが送られてきた。
まさかスタンプを送ってくれるなんて思わなくて、思わず顔が綻ぶ。もっと硬い文章が返ってくるかと思ったのに。穂高さんの可愛らしい一面を見た気がして何だか嬉しくなった。
< 73 / 98 >

この作品をシェア

pagetop