捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
2.縋りたい気持ち
雄一とは二人で小さなアパートに住んでいる。学生の頃は私は祖父母の家に住んでいたけれど、卒業してからは一人暮らしを始めた。その後、雄一がソレイユで働き出して仲良くなってからは、いつの間にか雄一が転がり込むように住むようになって、いつの間にか同棲になっていた。二人で頑張って行こうねって、よく語り合っていた。

経営も軌道に乗っている。私達も二十八歳。そろそろ結婚してもいい頃合いで、結婚をほのめかされたこともある。だけど今は、結婚なんて……という気持ちの方が大きい。

「莉子、学生の時の三隅新太って覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ」
「今度結婚するらしい」
「わあ、そうなんだ。おめでとう!」
「それで俺、幹事頼まれたからさ、これから夜出ていくこと多くなると思う。あー、純平と真司も一緒だから」
「そっか、わかった。盛大にお祝いしてあげてね」

同級生の結婚の話はなんだか嬉しい。雄一の交友関係はあまり知らないけど、名前だけはわかる。私の友達も結婚の話がちらほら出だした。友達からは次は莉子たちだよね、って言われてるくらい。

それくらい、私たちは長く付き合っているし同棲もしている。だけど、私たちはそれだけのことで。雄一の家での態度の変わり様にとても嫌気が差しているし、私の結婚に対する気持ちは今までよりも更にぐんと落ち込んでいる。

それでも、今日は雄一の機嫌は良さそうだ。

「俺たちもそろそろ結婚するか。ていっても、何も代わり映えしなさそうだけどな」
「結婚したら私の名字が変わるよ」
「それ、重要か?」
「女の子にとっては重要なことだよ」
「ふーん、くだらねぇ」

雄一は興味なさそうに笑った。
たまに結婚の話題を出してくるくせに一向に前に進まない私たち。私も、二つ返事で「結婚したい」って言えない気持ちがあるからなんだと思うけど。心のどこかで、その話題を避けようとしているのだ。
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