捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される
9.過去の傷
しんと静まり返る寝室。
少しひんやりとした空気。
洗いたての清潔なシーツ。
すべてが緊張に繋がり、ドキドキと落ち着かない。
とは言いつつも、流れに身を任せてベッドに入ったけれど、穂高さんとの距離が近い。近すぎる。ベッドって、こんなに狭かったっけ?
穂高さんがゆったりと眠れるように、私はなるべくベッドの端のほうに体を寄せた。それでも二人でシングルベッドに寝るのは狭い。私はいいけど、きっと穂高さんが窮屈だと思う。申し訳ないから、やっぱり私はソファに行こう。
そう思って体を起こそうとしたとき、後ろからお腹のあたりをぐいっと引っ張られて穂高さんに密着した。
「ほら、そんなに端にいるとまた落ちてしまうよ」
「えっ、あっ!」
今朝のことを言っているのだろう。ソファから転がり落ちたことを思い出して、恥ずかしくなる。
「お、落ちないですから」
「そうかな?」
くすっと笑う気配が頭の後ろで感じる。穂高さんの腕は私のお腹にまわったまま、離してくれる様子はない。これではまるで後ろから抱きしめられているみたいで、今朝と同じ状態になっている。
どうしよう。嬉しいのに、この緊張が伝わってしまいそうで怖い。落ち着け落ち着けと、自分の胸のあたりを強く握る。と――
「莉子」
耳元を掠める、低く甘い声。
ぞくりと体の奥のほうが疼いておかしくなりそう。
「抱きしめられるのは嫌?」
「嫌じゃ……ない……です」
「ん。じゃあよかった」
穂高さんは腕の力を弱めることもなく、そのまま私を抱きしめ続ける。もしかしてこのまま私を抱き枕として寝るのだろうか。だとしたら、私はとてもじゃないけど眠れる気がしない。触れられている部分が熱を持つように熱く、感覚が研ぎ澄まされるかのようだ。
「……ソレイユのこと、ごめん」
「え?」
「本当は休業なんてしたくなかったと思うけど……。上手く対処できなくて、莉子さんに悲しい思いをさせてしまった。ごめん」
穂高さんが謝るとき、いつも悲しそうな声になる。私はそれを聞くたびに、胸が締めつけられて苦しくなる。だって穂高さんは何一つ悪くないのだから。
少しひんやりとした空気。
洗いたての清潔なシーツ。
すべてが緊張に繋がり、ドキドキと落ち着かない。
とは言いつつも、流れに身を任せてベッドに入ったけれど、穂高さんとの距離が近い。近すぎる。ベッドって、こんなに狭かったっけ?
穂高さんがゆったりと眠れるように、私はなるべくベッドの端のほうに体を寄せた。それでも二人でシングルベッドに寝るのは狭い。私はいいけど、きっと穂高さんが窮屈だと思う。申し訳ないから、やっぱり私はソファに行こう。
そう思って体を起こそうとしたとき、後ろからお腹のあたりをぐいっと引っ張られて穂高さんに密着した。
「ほら、そんなに端にいるとまた落ちてしまうよ」
「えっ、あっ!」
今朝のことを言っているのだろう。ソファから転がり落ちたことを思い出して、恥ずかしくなる。
「お、落ちないですから」
「そうかな?」
くすっと笑う気配が頭の後ろで感じる。穂高さんの腕は私のお腹にまわったまま、離してくれる様子はない。これではまるで後ろから抱きしめられているみたいで、今朝と同じ状態になっている。
どうしよう。嬉しいのに、この緊張が伝わってしまいそうで怖い。落ち着け落ち着けと、自分の胸のあたりを強く握る。と――
「莉子」
耳元を掠める、低く甘い声。
ぞくりと体の奥のほうが疼いておかしくなりそう。
「抱きしめられるのは嫌?」
「嫌じゃ……ない……です」
「ん。じゃあよかった」
穂高さんは腕の力を弱めることもなく、そのまま私を抱きしめ続ける。もしかしてこのまま私を抱き枕として寝るのだろうか。だとしたら、私はとてもじゃないけど眠れる気がしない。触れられている部分が熱を持つように熱く、感覚が研ぎ澄まされるかのようだ。
「……ソレイユのこと、ごめん」
「え?」
「本当は休業なんてしたくなかったと思うけど……。上手く対処できなくて、莉子さんに悲しい思いをさせてしまった。ごめん」
穂高さんが謝るとき、いつも悲しそうな声になる。私はそれを聞くたびに、胸が締めつけられて苦しくなる。だって穂高さんは何一つ悪くないのだから。