捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

「ほんとほんと、マスターったらかっこいいわ」
「これで喋らなきゃ完璧な男前なのに」
「ばかやろう、喋るからいいんだろうが」
「そういうところよ、お父さん」

皆が口々に好き勝手なことを言う。気心の知れた仲だからこその会話。そのどれもがとても尊くて、永遠のものになればいいのにと思った。
明るい笑い声が、ソレイユに響き渡る。

「皆さん、今日は本当にありがとうございました。素敵な時間を過ごすことができて嬉しかったです。またいつか、どこかでソレイユを再開できたらいいなって思っています」

ここではない、どこかで。
いつかまた、きっと。
私らしいカフェを作っていけたらいいなと思う。

「莉子ちゃん」

千景さんが、背から大きな花束を出した。

「え？」
「長い間お疲れ様」

大きな花束は抱えるとずっしり重い。色とりどりの花は綺麗に咲き誇り、明るい未来を予感させる。皆が口々に、「お疲れ様」「ありがとう」と言ってくれる。たくさん拍手をしてくれる。胸がいっぱいで張り裂けそう……。

「嬉しい……」

ぽろっとこぼれた雫は、嬉しさの涙。
嬉しくてもこんな風に涙が出るものなんだ。

「莉子ちゃん、ソレイユはとても愛されたカフェだったんだね。私たち、またこんなカフェをつくって働けたら幸せだね」

結愛ちゃんが一緒に涙ぐみながら、笑ってくれた。

ソレイユが愛されたのは、皆さんのおかげ。ここに、この場所にソレイユがあったんだよって、みんなの心に思い出として残ったらこんな嬉しいことはない。