頑張れ、食堂委員会
「時田楓に物申ぉーす! 時田紅葉ちゃんとの交際をかけて、勝負しやがれ! いやいや、して下さいっ!」
男は何故か俺ではなく、陸に向かって言い放った。
「…………」
俺や陸を含めた皆が、突然やって来た男を呆然と見つめた。
「どうしたっ! 時田楓! 怖じ気付いて何も言えなくなったか?!」
尚も男は俺ではなく、陸に言っている。
陸も目を何度も瞬かせ、「え、俺?」と呟いている。
しばらく、どうしたらいいか悩んだらしい陸が顔の前で、手を振った。
「いや、あのさー、俺、佐々木陸って、名前なんだけど。楓っちはあっち」
全く呼ばないあだ名で呼んで、陸は俺に指を差した。
「な、何だって?!」
男は勢い良く俺に顔を向けた。勢いが良かったらしく、俺のところにまで風が届いた。
「お前が、時田楓か?」
じっと男は俺を上から下まで何度も見る。
そして、紅葉に目を向ける。
紅葉は驚いて、俺の後ろに隠れる。
「……確かに、似てる」
男はぼそりと呟いた。
双子なんだから当たり前だろう、と喉のところまで出そうになったが、俺はぐっと堪えた。