ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
二人は、花畑の周りを歩きながら話をしているのだろう。ルイーズは、時々しゃがみ込むと、花の近くに生えている草を見ているようだ。

「これは……ハーブかしら?」
「それは、君の御祖父様からいただいたものかもしれないな」
「御祖父様から?」
「ああ、その草だけでなく、ここに咲いている薄紅色の花も、お土産に頂いたものなんだ」
「元々は、白いお花……だけですか?」
「ああ、君がここに来たときは、白い花畑だった」
「そうですか……、この薄紅色の花は、初めて見ました」
「ああ、俺もここで初めて目にした。花に詳しいわけではないが、花弁の形からして、異国のような雰囲気だな」

ルイーズは、優し気な薄紅色の花を見ながら、これらをお土産に渡した祖父の思いを、漠然とだが感じとっているようだ。

その後、二人は大木がある場所まで戻ると、リオンは、持ってきたブランケットをその根元近くに敷き、ルイーズを呼び寄せ一緒に腰を下ろした。

「11年前に、ブラン家の前当主である御祖父様と君が、この辺境の地に来たことは聞いたと思うんだが……」
「はい」

「その当時、俺は11歳で、君は6歳だった。母が里帰りを兼ねて、出産のために妹のレアと一緒に隣国の生家に帰省していたんだが、俺は後継者教育や剣の稽古があったから、一人屋敷で過ごしていた。そんな時、いつも辺境には一人で来ていた君の御祖父様が、君を連れてクレメントの屋敷にやって来たんだ。

昔から、剣豪と言われる君の御祖父様と、剣一筋の祖父は仲が良かったらしくて、会うとよく剣の稽古をつけてもらっていたんだ。その時も、稽古を見てもらえる喜びと、妹と同じ年頃の君がいたから嬉しかった。

ここへも、その時に来たんだ。君が帰る日の前日に、花が好きだという君に喜んでほしくて、ここへ連れてきた。君はずっと楽しそうに笑っていて、本当に可愛かった……だから、俺は離れるのが寂しくて、ずっと一緒にいたくて『結婚しよう』って言ったんだ」
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