ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

ルイーズの決意

 パーティーのフィナーレが近づく頃、ルイーズとエリーは、レアの勧めで夜の庭園に出てきたようだ。落ち着いた気温のせいか、人もまばらに点在している。二人はドレスを着用していないため、目立たないように脇道をひっそりと歩いている。

「レアさんの言っていた装飾って、これのことね。とても綺麗だわ」
「本当ね。暗闇の中に、蝋燭が置かれているなんて初めてみるわ。あれは、陶器でできた囲いかしら。あんな風にすれば、危なくないわね」

 感動するルイーズと、感心するエリー。二人は、パーティーの余韻が残る庭園をゆったりと満喫しているようだ。
 しばらくすると、エリーが立ち止まり、ある一点を凝視している。ルイーズも釣られてそちらを見ると、そこにはリオンとエマが腕を組んで立っていた。おまけにエマはリオンの肩に頭を預けているようだ。

「あれは何かしら……」

 エリーが低い声で呟く横で、ルイーズは固まっているようだ。

「ルイーズ、ちょっと待っててね」

 エリーは、真顔で告げると、二人のもとに足早に歩いて行った。

「二人とも、何をしているんですか?」
「あら、エリー。今、リオンさんにしつこく付きまとう女性たちを追い払うために、恋人の振りをしていたのよ」
「リオンさん……、失礼ですが、今そんな小細工をしている場合ですか?こんな些細な事と思うかもしれませんが、こんなことで大事な人を失うかもしれませんよ。」
「エリー、大袈裟よ。リオンさんには、多くの釣書が届いているそうなのよ。私は、その防波堤になっただけ。それに、エスコートなんて友人でもするものなのよ。そんなことで目くじらを立てないで」

 エマの言葉を聞かずに、リオンに問いかけるエリー。

「今、ルイーズの気持ちは揺れているのに……、何でそういう中途半端なことをするのかしら。二人とも、信じられないわ」

 目を見開き固まるリオンの前に、ルイーズが歩いた来た。

「リオンさん、改めてお話しようと思っていたのですが、お花畑で言ってくれたこと…、嬉しかったです。でも、卒業後は侍女の仕事を精一杯頑張りたいと思います。どうかお身体を大切に、ご家族を大事にしてください」

「えっ!? ルーちゃん……、どういうこと??」

「きっかけではありますが、この場面を見たから決めたという訳ではありません。それでは、失礼します」
何も言葉を返すことのできないリオンとエマは、この場から去る二人の後ろ姿を見ていることしかできなかった。

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