ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

ルイーズの日常

 長旅を経て、辺境から我が家へ到着したルイーズとリアム。玄関先では、ローラと手を繋いだミシェルが今か今かと二人の帰りを待っていた。

「ねえ…さま、にい…さま。おかえり…なしゃい」
「ミシェル、ただいま。ずっとここで待っていてくれたの? それに……、呼び方も頑張って練習したのね」
「うん」
 二人は、ミシェルの健気さに感動したようだ。ミシェルを取り合うように抱きしめている。

「ローラ、ミシェルに何かあったの?」
「奥様とご一緒されたお茶会で、同じ年頃の子供に、言葉を揶揄われたそうなのです。それから、練習を頑張っているのですよ」
「……、そんなことが。まだ、四歳なのよ…私たちのいない数週間の間に、あんなにも頑張って」
「お嬢様、ミシェルお嬢様はお強いですよ。大丈夫です。気長に見守って差し上げましょう」
「……うん、そうよね。私も練習に付き合うわ」

 その日の夜は、家族全員でいつもより長めの晩餐を楽しんだ。食後のお茶を楽しむころには、眠たそうなミシェルを抱えて、ルイーズとエイミーがその場を後にした。リアムも付いて行こうとしたが、ルーベルトにつかまり執務室に連れていかれたようだ。

 晩餐前に入浴を済ませていたミシェルは、ベッドに横になると即寝したようだ。その姿を確認すると、ルイーズはエイミーにミシェルのことを質問し、自分のことを報告した。

「そう、そんなことがあったの。ルイーズは、それで良かったの?」
「婚約も、侍女の話も嬉しかった。リオンさんのことも、とても大切です。でも、今は集中して色々なことを身につけたい。それに……、気持ちが追いつかないの」
「辺境伯の御子息には、もう少しゆっくりと進めてほしかったわね……。ルイーズ、今は焦らなくても良いと思うわ」

 無言で頷くルイーズの頭を撫でるエイミー。ルイーズの表情も和らいだようだ。エイミーに話すことで、気持ちが少し楽になったのだろう。

 ルイーズは、それから長期休暇が明けるまでの間、リアムとミシェルとの時間を大切に過ごした。

 

 
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