ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

道筋

 今日は、侍女科の試験最終日ということもあり、帰宅時間が早いようだ。ルイーズとエリー、そしてクレアとミアの四人は、昼過ぎには女学院を出て修道院へと向かった。

 修道院に向かう間、ルイーズが三人にリアムのことを打ち明けた。父親と彼の会話を聞いたこと、今度彼に会うときは、成長した自分でいたいことなど。珍しく赤裸々に語るルイーズが、最後は大切な人だと告げると、何故か三人は喜んだ。

「ルイーズ、応援するわ」
「会えないのは辛いけど、今は頑張り時ね」

 クレアとミアの言葉を聞きながら、何度も頷くエリー。

「話を聞いてくれてありがとう。何だか落ち着かなくて」

 その後も四人は、花畑を見ながら会話をして、修道院までの道を楽しんだ。

 ルイーズとエリーが初めて修道院を訪れた日。二人は、医務室の周りに日常生活で役立つ薬草を植えたいと思ったようだ。後日、修道院長と女学院長の二人に話を通した二人は、月に1・2回こうして修道院を訪れている。いつの頃からか、そこへミアとクレアも加わった。今日は、医務室前に植えたローズマリーとラベンダーを収穫するようだ。四人は、医務室前に着くとエプロンをして、作業に取り掛かった。

「ローズマリーすごいことになっているわね」
「そうね。今日は、多めに切り取っても大丈夫ね」
「籠、足りないかな~、私、調理場に行ってくる!」

 籠を取りに行ったはずのミアが、すぐさま戻ってくるなり、エリーに何かを聞いているようだ。

「ねえ、あそこにいる男性って、もしかしてルイーズの……?」

 ミアの問いに驚きながらも、男性を見ると頷くエリー。三人は、ルイーズに声を掛けようとしたが、ルイーズは地面を見たまま作業を続けている。

「えっ、見るのもだめなの?」
「見たら、近づきたくなるでしょう?」
「そっか……」
「でも、彼…少し近づきすぎよね。会わないって、誓ったのよね」
「気持ちが溢れすぎて、足が前に進んじゃうのよ。彼、そんな顔してるじゃない。切ないわ~」

 ミアとクレアの話を聞かなくても、ルイーズは気づいているのだろう。ルイーズ自身、応接室での会話を聞かなかったら、駆け寄っていたかもしれない。しかし、彼の姿が視界に入れば、気持ちが揺らぐ。

「クレア、ミア作業を続けましょう」

 エリーの呼びかけに、二人は持ち場に戻ったようだ。

 四人は、作業が終わるまで夢中で手を動かした。途中、空気の変化を感じたルイーズは、顔を上げて周りを見渡すも、リオンの姿は見当たらなかった。

 ルイーズは、帰り際に修道院長から呼び止められ、植木鉢を渡された。

「今日、訪問された方からルイーズちゃんに。初めて見るけど、綺麗なお花ね」
「……ありがとうございます」

 ルイーズは、植木鉢を受け取りながら、辺境の花畑を思い出しているようだ。屋敷に戻ると、部屋の窓台に置いた薄紅色のその花を、しばらく眺めていた。
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