ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
「ハッ? クレメント? 御息女の侍女?」
「長期休暇にクレメント家でお世話になったときに、何度酷い目にあっても『大丈夫』と答える彼女を支えたい、お力になりたいと思ったのです。その後もお手紙でやり取りをさせていただいています。辺境伯爵様と姉のレアさんにも、侍女の件はお伝えしています。勝手なことをして申し訳ございません」
「あんなに頑張っていたのに、良いのか? その努力が実って、推薦してもらえるんだぞ? それに、辺境なんか行ったら、中々会えないじゃないか!」
「お父様、ごめんなさい。どうか、行かせてください」
「…………」

 ルーベルトは、両手で顔を覆い項垂れてしまった。エイミーに、背中をとんとんされても復活できそうにない。

「ルイーズの中では、もう決まっているのね。でも、お父様には時間が必要みたい。落ち着いたら、またお話ししましょう」
「分かりました」

 ルイーズは、ルーベルトを気にしながらも部屋を退出した。ドアが閉まる音を聞くと、ルーベルトが顔から両手を外した。

「最後の言葉はだめだ。泣きそうだ。ハァー、彼奴の喜ぶ顔が目に浮かぶよ」
「でも、あなたが私を呼んだ時点で、こうなることは分かっていたのよね?」
「…………」
「フフッ。気持ちの整理がついたら、言葉を掛けてあげてね」


 両親に自分の希望を伝えた日から数日後。
 ルイーズは、ルーベルトから『いつでも戻ってきなさい』と言われたようだ。その翌日には、マノン先生に推薦の辞退を告げ、辺境行きを報告した。

「ルイーズとクレアの進路が決まってほっとしたわ~。それにしても、こんなにぎりぎりに決まるなんて思わなかった」
「長期休暇明けには決まってる人もいたからね」
「「心配かけてごめんね」」

 ミアとエリーに、ルイーズとクレアが謝ると、ミアが疑問を投げかけた。

「クレアは何故すぐに、王宮行きを決めなかったの?」
「姉に、教員になりたいと伝えたの。でも、外で侍女の仕事を経験するように言われたわ。それで返事が遅れたの」
「そっか」
「だけど、決まって良かったわ……。でも、これからは、中々会えないわね」

 エリーの言葉に、しんみりとした空気が流れた。
 

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