ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
 馬車が玄関前に到着したようだ。リリーは、ルイーズがドアから出てくる姿を見ると駆け出し抱きついた。ルイーズは、驚きながらも笑顔でリリーを抱きしめた。

「ルーちゃんが本当に来てくれた! ありがとう!」
「リリーちゃん、お久しぶりです。お手紙を沢山書いてくれてありがとう。嬉しかったです」
「お手紙は、お兄様の分も書いたの。お父様にお手紙を出すのも、会いに行くのも禁止されていたから」
「そう……なのですか?」
「うん。少し可哀想だった」
「さあ、皆の所へ行こう!」

 二人は、レアに呼びかけられ、皆の待つ場所まで歩みを進めた。

「ルイーズちゃん、リリーのために来てくれてありがとう。ルーベルトから手紙をもらったんだ。王宮への推薦を蹴ってまでこちらに来てくれたんだってな。本当にありがとう」

「リリーちゃんとの約束ですから。それに、こちらこそ受け入れてくださり感謝いたします。精一杯務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」

「ああ、こちらこそよろしく。さあ、長旅で疲れただろう。部屋で少し休んでくれ。メアリー、部屋の案内を頼む」
「かしこまりました」

 メアリーに案内され通された部屋は、レアとリリーの部屋と同じフロアーのようだ。ルイーズは、慌てた様子でメアリーに尋ねた。

「メアリーさん、こちらが私に割り当てられたお部屋ですか?使用人部屋とは違うようですが?」
「こちらで間違いはありませんよ。リリーお嬢様は、まだ体調が万全ではありません。近いお部屋の方が、都合が良いのです」
「そうですか。リリーちゃんのお世話は、今はどなたが?」
「レア様と私が、交代でお世話をしております」
「乳母の方は、まだ回復されていないのでしょうか?」
「そのようです。お年を召されていらっしゃいますから、あの件をきっかけに長引いているようです」
「そうでしたか……」
 
 ルイーズに用意された部屋は、可愛らしく装飾されていた。誰が見ても使用人部屋とは思はないだろう。薄紅色のカーテンやクッションを見て、本人が戸惑うのも仕方がない。しかし、メアリーの発言から追求するのは控えたようだ。

「それでは、晩餐のお時間になりましたら、お呼びに参ります」
「よろしくお願いします」
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