ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
 クレメント辺境伯爵家が治める辺境の領地には、広範な領地を守るために複数の砦が築かれている。今回の遠征では、その中でも最大規模の砦に常駐する騎士たちとの交代が目的のため、遠征期間が長期に及んだようだ。

 前回の遠征では、騎士団を率いた団長の辺境伯が砦にいる騎士団に合流した。その時は、短期間ではあったが屋敷を留守にしている間にリリーを危機的な状況に追い込んだ。辺境伯は、その時の自分が許せないからと、今回は副団長のリオンに任せたようだ。

 その頃リオンは、遠征を共にする仲間たちと夕食を共にしていた。

「皆、長い間ご苦労だったな。帰還したら、まとまった休暇が取れる。どうかゆっくり休んでほしい」

 リオンの発言に安堵の顔を見せる騎士たちは、和やかな雰囲気の中で食事をはじめた。

「そういえば、副団長、聞きました? 2~3ヶ月前に、新しい侍女が来たらしいんですけど、ものすごく可愛い子らしいですよ。残留組の奴らが騒いでるって手紙に……、エッ? 副団長?」

 食事を口に運びながら気軽な調子でリオンに声をかけた騎士団員は、目の前で固まる上司に驚きの表情を浮かべている。

「2~3ヶ月前……、侍…女? ものすごく可愛い……。ルイーズ?」
「おい、お前! 余計なことを言うな!」
「余計な……、こと? シオン、お前は何か知っているのか?」
「……知らないよ」

 シオンがリオンから顔を背けたとき、外出していたブライスが戻って来た。

「おい、リオン! 伝令が来てるぞ!」
「伝令? 何があった!!」

 リオンはブライスから手紙を奪い取ると、急いで中身を確認した。手紙に視線を落としたままのリオンから指示を待つ騎士団員達。そんな張り詰めた空気の中、リオンが皆に向けて言葉を放った。

「……皆! 聞いてくれ! 明朝には出発する! 屋敷に戻るから準備を急いでくれ!!」
< 183 / 187 >

この作品をシェア

pagetop