ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

二人の願い

「ルーちゃん、休日だからいつもの呼び方で良い?」
「もちろん。私もリリーちゃんと呼んで良いですか?」
「もちろん!」

「二人とも、早く馬車に乗ってくれ」
「早くしないと、沢山見て回れませんよ」

 玄関前には、馬車のドアを開けるレアと、護衛のために馬を引くクロードがいた。今日は珍しいことに、レアも馬車で移動するようだ。二人は急ぎながらも楽しそうにレアが待つ馬車に乗り込んだ。走り出した馬車が市街地に入ると、ルイーズとリリーは街並みを見ながら目を輝かせている。そしてお店が立ち並ぶエリアに入ると、リリーはレアに馬車を停めるように頼んだ。

「ルーちゃんも、どこか寄りたいところがあったら言ってくれ」
「はい。でも、街並みを見ているだけで楽しいです」
「そうか、気に入ってくれて良かった。それならもう少しこの辺りを見てから、お昼にしよう」
「お姉さま、あそこに行ってもらえるんでしょうか?」
「そのつもりだ。お弁当も持ってきたからな」

 三人は、街歩きを楽しみながらいくつかのお店を覗いた後、昼食を摂るために移動するようだ。馬車に揺られながら目的地に向かう間、リリーは窓から外を覗いてはきょろきょろと辺りを見渡している。

「リリー、落ち着け」
「リリーちゃん、どうしたの? 何か気になるものでもあった?」
「ううん、何でもない」

 頭を横に振りながら答えるリリーは、心配する二人にぎこちない笑みを見せながらも、まだ外の様子を気にしているようだ。そんなリリーを呆れた様子で見ているレアは、二人に外へ出る準備をするように告げた。

 どうやら目的地に着いたようだ。馬車が停まると、護衛をしていたクロードがドアを開けた。その瞬間、リリーは我先にと馬車から飛び出すと、その様子を見ていたクロードに抑えられた。

「リリーお嬢様、お二人が心配なされますよ」
「ごめんなさい。何だか落ちつかなくて」
「兄上に送った手紙のことですね。伝令に持たせる手紙に一緒に入れたのですから、おそらく御父上も気づかれているでしょう。ですから、心配は無用です」

 リリーは驚いた顔をしながらも、小声で囁くクロードに何度も頷いた。そんな二人のやり取りを車内から見て安心したルイーズは、窓から外の景色を見渡すと、寂しそうな表情を浮かべた。どうやら押さえていた感情が抑えきれずに出てしまったようだ。リオンと来たときのことを思い出してしまったのだろう。

「ルーちゃん、大丈夫か?」
「レアさん……はい、大丈夫です」

 レアは、そんなルイーズを気にかけながらも外へと連れ出した。

< 184 / 187 >

この作品をシェア

pagetop