ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
 四人は、花畑を一望できる場所まで歩いて行くと、そこにお弁当を広げた。それから皆で食事をしながらおしゃべりを楽しんでいると、何やら遠くの方から微かな音が聞こえてきた。四人は顔を見合わせてから、立ち上がると音がする方を探るように見つめた。

「あっ! お兄様っ!」

 ルイーズは、リリーの叫んだ言葉に驚きながらも、遠くを見つめながらその姿を探している。徐々に近づく音と共に、会いたくても会えなかった相手の姿が近づいてきた。

「私たちは邪魔だ。リリー、クロード向こうへ行くぞ」

 名残惜しそう見ている二人を、レアが近くの植え込みへと連れて行った。

 顔がはっきりと見える距離まで近づくと、リオンは馬から素早く降りてルイーズの前に駆け寄った。

「ルイーズ」
「リオンさん……、お久しぶりです」
「本当に、久しぶりだな。辺境には、いつ来たんだ?」
「……三か月…前に」
「そうか。会いにいくと言ったのに、行けなくてすまなかった。」

 俯きながら顔を横に振るルイーズの瞳は、うっすらと涙が滲んでいる。

「屋敷に来てくれたこと知っています」
「……そうか。あの時は、自分が未熟なせいで父にも子爵にも会うことを許してもらえなかった」
「修道院に来ていたことも知っています」
「あれは……、一目だけでもと思ったんだ」
「お花、ありがとう」
「離れていても、思い出してほしくて。本当は、ブラン家に行ったときに会えたら渡そうと思っていたんだ」

 リオンはルイーズの手を取り、顔を覗き込むと自身の思いを伝えてきた。

「好きだ。子供の頃からルイーズを想う気持ちは変わらない。もう誰にもとられたくないんだ。これからは、ずっとそばにいてほしい。」

「私も……、リオンさんが好きです。いつも近くに感じていたい。でも、私はリリーちゃんが心安らかに過ごせるまで、リリーちゃんの侍女を続けたい。そんな私だと、難しいかしら……?」

「いや、侍女は続けてくれて良い。俺もリリーも、一緒にいられるだけで幸せなんだ。だからどうか結婚してほしい」

「はい」

「ああ、やっとだ。抱きしめても良いだろうか?」

 ルイーズは、恥ずかしいのか俯きながらも頷いた。近くから二人を見守る存在にも気づかないくらい、長いこと抱きしめ合っていた。


「兄上、必死だな」
「それは仕方がないですよ。子供の頃にルイーズ嬢が婚約をしたと知ったときは、本当に落ち込んでいました。それなのに、今度はようやくと思ったら会えなくなるし。当主もリオンに我慢させ過ぎです」
「でも、砦にいるはずの兄上が何故ここにいるんだ」
「当主が帰還するリオンに伝令で手紙を届けたのですよ。『許す』と」
「私もお兄様にお手紙を書いたの」
「何て書いたんだ?」
「ルーちゃんが寂しそうって」
「ルーちゃんは、リリーと一緒にいたとき楽しそうにしていたぞ」
「うん。そうなら嬉しい」
「さあ、お二人とも戻りますよ。早く当主に報告しなければ。これから忙しくなりますよ。」

 ウキウキした様子のレアとリリーに、ほっとした表情のクロード。そんな三人の顔からは優しい笑みが零れていた。
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