ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

ずっと一緒に


 大自然に囲まれた辺境の教会。

 高く澄んだ鐘の音が響く中、生涯を誓い合ったばかりの新郎と新婦が教会の扉から参列者の前に現れた。そんな二人を祝うように、祝福の言葉を浴びせる多くの者たちで、普段は静寂なこの場所も幸せな空気に包まれている。

 新郎新婦には、誰も入り込むことのできない二人だけの特別な雰囲気が漂っている。参列者たちには聞こえていないが、リオンはルイーズの傍らで、〈女神だ〉〈きれいだ〉〈愛している〉などと囁き続けている。

 ルイーズは、ブラン家とクレメント家が用意した総レースのウエディングドレスを身に纏いながら、そんなリオンの言葉に苦笑いをしながらも時より優しい目でリオンを見つめている。

「必ず幸せにする」
「私も、貴方を幸せにしたい」

 そんな二人の姿をうっとりと見つめる女性陣たちと、リオンの甘さに引き気味の男性陣。その近くでは、しくしくと泣き出すルーベルトと慰めるエイミー。なんとも対照的な場面が広がっていた。


 時はリオンが求婚した一年前に遡る。

 遠征先から急いで屋敷に戻ったリオンは、騎士団を解散させるとその足で花畑に向かったそうだ。そこには愛しのルイーズが、一人ぽつんと佇んでいた。(リオンにはそう見えていた)
 リオンは、この機を逃すかとばかりに早急に行動した。ルイーズから結婚の同意を得ると、クレメント家に戻り父親へ話を通して一年後の結婚を認めさせた。

 先ずは婚約だと、半月後にはルイーズと二人でブラン家を訪問。帰省と婚約の話にブラン家の人たちを大層驚かせた。こんな早くに姉に会えるとは思っていなかったリアムとミシェルは、滞在の延長をお願いして、それからの三日間は姉と共に楽しいひと時を過ごしたようだ。

 その際、元婚約者のオスカーが、ルイーズの帰省を知り謝罪に訪れた。本人は、もう一度やり直したいとルイーズに縋ったが、横にいるリオンに睨まれ静々と帰っていった。

 その後、王宮で婚約の手続きを済ませると、友人たちに報告をしてから辺境へと戻った。そして、クレメント家の屋敷に着くと、二人はそれぞれの生活に戻っていった。
 しかし、隙あらばルイーズの側にいようとするリオンは、辺境伯とレアから再三にわたり注意をされると、結婚式までの接近禁止令が出された。そんな予期しない出来事もあったが、同じ建物内にいるだけでも幸せそうな二人は、ようやく結婚式を迎えることができたようだ。


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