ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
「それは仕方がないわ。ルイーズの中では、将来の方向性が決まっていたのだから。
それが無くなって、戸惑うのも無理はないわ。それに何が出来るのかって話だけど……、今やっていることや出来る事、やってみたいこと何でも良いと思うのよ。もちろん得意なことや好きなことでもね。例えば、時間がある時は何をしたい? 眠る前にふと考えることは何?」
 エリーに問われ、考えるルイーズ。

「家族やエリー、大切な人のことを考えることが多いわ。リアム、ミシェルともっと遊んであげたい。お菓子を作って食べさせてあげたい。毎日、母の部屋にお花を飾ってあげたい。父ともっと話をしたい。エリーと街にお買い物に行きたい。それから……昨晩はオスカーのことも考えたわ」

「そう……、最後はちょっと違うと思うけど……。ルイーズは、人のお世話をするのが元々好きなのね。二人に接する姿を見て、母性が強いとは思っていたけれど。相手に何かをしてあげたいという気持ちは……相手の笑顔が見たい、幸せになってほしい、という思いからきているのよね、きっと……」

「そうね、幸せでいてほしいと思っているわ。そのために、自分は何が出来るのか……」

 ルイーズは、此処のところ心にあった何かが、エリーから言われたことで、少しずつ繋がっていくような感覚を覚えていた。〈大切な人たちのために行動すること〉エリーのように〈自身のために前向きに行動すること〉自分には、前者だけが当てはまると思っていたルイーズは、自分の心を少しだけ理解できたようで嬉しくなったようだ。
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