ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
 執務室に入ると、父親のルーベルトと母親のエイミーが二人並んでソファーに座っていた。さすが、出来る執事トーマス。ルイーズの様子から、エイミーにも声を掛けに行ったようだ。

「ただいま戻りました、ルイーズです」
「どうぞ、入っていいよ」

 部屋の中からルーベルトが返事をした。

「失礼いたします」
「ああ、今日はどうしたのかな?」

 何故か、ルーベルトも緊張しているようだ。微妙に声が上擦いている。それに釣られてなのか、ルイーズも少しばかり緊張しだしたが、意を決して話し始めた。

「先日、婚約白紙の話をした後に、お父様にこれからのことを考える時間をくださいとお願いしたのを覚えていらっしゃいますか?」
「ああ、もちろんだよ」

 何故か不安そうな顔で頷くルーベルトと、それに対し口火を切るルイーズ。

「あれから、これからのことを自分なりに考えたのです。今の私に何ができるのか、何がしたいのか。新しい婚約者はどうするのか。考えても、今の私に出来ることは分かりませんでした。新しい婚約者についても、考えられませんでした。でも、やってみたいと思えるものが見つかったのです。私、侍女科で様々な経験をしたり、新しいことに挑戦してみたいのです。どうか、侍女科で学ぶことを認めていただけませんか」

「…………」
「気持ちは決まっているのね」
「はい」

 ルーベルトは固まったままだが、エイミーはルイーズの表情を見て、安心した様子だ。執事のトーマスや侍女のローラからも、考え込むルイーズの話を聞いていたのだろうか。まさか、こんなにも早く、思いの丈を聞かせてもらえるとは思っていなかったようだが。  

 我に返ったルーベルトは、ルイーズに尋ねた。

「淑女科が嫌なのか? 嫌ではないのなら、今のままで良いじゃないか。新しい婚約者を探すから、もう少し待っていなさい」
「あなた!」
「坊ちゃま!」
「坊ちゃまじゃない!」

 大人たちのあたふたする様子を、呆然とした様子で見守るルイーズ。

「ルイーズ、お父様とお話をするから、お部屋に戻って宿題でもしていらっしゃい」

 笑顔のエイミーに頷き、部屋を後にするルイーズ。
 その後の執務室では、母親のエイミーと執事のトーマスから、お説教をされる父親ルーベルトの姿があったとか、なかったとか。
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