ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
「リザは、予定が詰まっているから無理よ。レアは……、早く帰省できるように予定を組み直すわ。でも、長期休みになってしまったらごめんなさい」

 肩を落とすエリザベスと、エマに感謝するレア。

「いや、無理を言ってすまない。よろしく頼む」

「良いのよ。でも、レアは頻繁に帰れる訳ではないし、リリーちゃんにも近しい存在がいると良いのだけど。近くに心を許せるような人はいないのかしら。エリーには、祖母やルーちゃんがいたから、少しは違ったのよね」

「ルーちゃん……、とは?」

 初めて聞く名前(愛称)なのだろう。レアはエマに聞き返した。

「エリーと同時期に転科した子爵令嬢よ。穏やかで優しくて、とても可愛い子なのよ。今思うと、幼いエリーはルーちゃんに癒されていたのかしら。母親同士のお茶会の時にしか会えなかったから、数か月に一度ぐらいだったと思うけど。それでも、『ルーちゃんに会うと幸せそうに笑うのよね』て母親がよく言っていたわ」

「そうか、侍女科にいるのか。機会があれば会ってみたいな」

 レアの言葉に困惑顔のエマ。やってしまった、とでも思っているのだろうか。

「そうね、機会があれば……」

 エマの返答を聞いて、今まで黙って話を聞いていたエリザベスが言葉を放った。

「あるじゃない、今度。その機会が」

 したり顔で答えるエリザベスに、面倒そうに答えるエマ。

「駄目よ。お茶会の組み合わせに関しては、先生方も既に決めていらっしゃるわ。生徒の私たちが口を挟んで良い話ではないわ。それに、あの子たちのことはそっとしておいてあげて」

「お茶会か……楽しみだな」

淑女科の上級生と侍女科の下級生による授業を思い出したのか、レアがつぶやいた。

 げんなりするエマに、楽しそうなエリザベスとレア。

 ルイーズの知らぬところで、なにやら様々な事が動きだしているようだ。
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