ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
 ルイーズが、休憩室に来るとは思っていなかったローラは、何かあったのかと心配そうだ。

「今、休憩中よね。ローラにお茶を淹れたくて来たのだけど、今、良いかしら?」

「私に…ですか? うっ……、ええ、頂きます……」

 ローラは感情が溢れ出し、感動で泣きそうになっているようだ。ルイーズを近くで支えてきた姉のようなローラにとって、ルイーズの成長が嬉しいのだろう。ルイーズは、甘いものが大好きな彼女のために、スコーンと多めのクリーム、そしてジャムをのせたものを差し出すと、紅茶を淹れ始めた。やはり、侍女としては先輩なので気になるのだろう。茶葉の選別から、最後の一滴を淹れるまで見届けると微笑みながら頷いた。ローラは出された紅茶の香りを確認して口に含むと、感想を伝える前にどうやら感極まってしまったようだ。

「お嬢様……、美味しいです。本当に美味しい……」
「ローラありがとう。練習にも付き合ってくれて、本当に感謝しているわ。それから……いつもありがとう」
「うっ……、もう、泣かせないでください。紅茶もスコーンのジャムも私好みでした。とても美味しかったですよ」
「これから、皆様の所へ向かうのですよね。今日は昼食後に、お嬢様がお茶を淹れることを侍女長が奥様にお伝えした様で、皆さん執務室でお待ちかと思います。楽しみにされていると思いますので、紅茶を振る舞って差し上げてください」

「ローラ、ありがとう。これから執務室に向かうわ。それと、他の皆にも紅茶を飲んでほしいのだけど、仕事の邪魔をせずに紅茶を出せる機会はあるかしら?」

「皆さん、週末に集まって秘密の会合をしているそうですよ。多分、今夜がその日だと思いますよ」
「秘密の会合なら、私が顔を出しても大丈夫かしら?」
「他の皆も、集まっていることは知っていますし、秘密でも何でもないですから大丈夫ですよ」
「そうなのね、分かったわ。今夜行ってみるわ」

ルイーズに会合へ行くことを勧めたローラは、四人の年配紳士たちに、今日は早く仕事を切り上げるように伝えるのだろうか。
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