ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
「おはよう、リザ。早かったわね。レアも来ているの?」

 エリザベスに答えながら、辺りを見回しレアを探すエマ。

「レアはまだよ。何かあったのかもしれないわ。これから人も増える時間だし、先に院長にご挨拶をして、中で待たせていただきましょう。エリー、ルーちゃん行きましょう」

 建物内は、静けさの中にも柔らかな空気を纏っている。皆同様の事を思っているのだろう、心なしか表情が穏やかになっているようだ。
 エリザベスを先頭に、他の三人もその後ろをついていく。慣れた足取りで歩くエリザベスだが、どうやら院長室に向かうようだ。ルイーズとエリーはというと、落ち着いた様子ながらも視線は上・横・斜めと忙しない。初めての場所であるから無理もないが……。

 そうこうしている間にも、院長室の前に着いたようだ。エリザベスがノックをすると、「どうぞ、お入りください」と室内から女性の声が聞こえた。挨拶を返し、エリザベスが入室すると、それに他の皆も追随する。

「ご無沙汰しております、修道院長様。本日はお忙しい中お時間を頂きましてありがとうございます」
「久しぶりね。ご挨拶ありがとう。でも……、様はいらないわ。院長でいいわよ」

二人の親しいやり取りを眺めていた二人は、院長からの視線に気付くと自己紹介を始めた。

「はじめまして、シャロン家のエリーと申します。お目にかかれて光栄です」
「はじめまして、ブラン家のルイーズと申します。お会いできて嬉しく存じます」

「二人とも、ご挨拶ありがとう。こちらこそ、お会いできて嬉しいわ。私は修道院長のイリスです。よろしくお願いしますね。さあさあ、皆こちらに座ってちょうだい。ほら、エマちゃんもこちらにいらっしゃい」

 穏やかな笑顔で迎えてくれた修道院長との初対面は和やかに進んでいった。しばらくの間、五人で世間話を楽しんでいたその時、ドアをノックしてレアが部屋に入ってきた。

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