ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
「お前は一体何を言っているんだ!! 自分が身勝手な要求をしているにもかかわらず、ふざけたことを抜かすな! いい加減にしろ!!」

 激怒した男爵が、オスカーを怒鳴りつけた。
 男爵は、それでも反省しないオスカーを、馬車に乗せておくようにと侍従に連れて行かせた。

 ルーベルトとルイーズは固まったまま、二人のやりとりを見守ることしか出来なかった。


 我に返ったルイーズは、男爵の側に近づいた。

「おじさま、大丈夫ですか」

 ルイーズの声に反応した男爵は、荒ぶる心を落ちつかせようと自身の胸に手を押し付けながら、近くの椅子に腰を下ろした。

「すまない、ここ最近あいつの様子がおかしいんだ。半年前、学園に入学した頃は普通だったんだが——」

「態度が豹変しているじゃないか。情緒不安定になっていたし、本人から何か話を聞いていないのか」

「聞いても『何でもない』としか答えないから調べてみたが、これといったことは分からなかった。ただ、新しい環境での生活に浮足立っているだけかと思っていたんだ」

「——そうか」

 父親たちの会話を聞いたルイーズは、今日庭園で見た光景を思い出していた。
 オスカーがあのようになった原因に、彼女が関係しているのか。決めつけはよくないが、男爵には彼女のことを伝えておくべきだと思っているようだ。

 父親たちが考え込む中、ルイーズは口を開いた。

「おじさま、実は今日の午後、オスカーを学院近くの庭園で見かけたの。バラ園の中を、同じ年頃の女の子と二人で、仲良さげに歩いていたわ。同じ色合いの制服を着ていたから、お相手も学園の生徒だと思うの。私は、すぐにその場を後にしたから、その後の様子は分からないのだけど——」

「ルイーズちゃん、すまない。そんな場面を見て傷ついたろう。本当に申し訳ない。
でも、オスカーにそんな相手がいるなんて知らなかった。それで、婚約を解消したいなんて言ってきたのか」

 最後は自問するかのように呟く男爵は、オスカーの言動を理解していなかった自分に動揺を隠せないようだ。

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