ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

修道院での再会

 エリザベスが、ルイーズに彼ら三人を紹介してくれるようだ。その前にルイーズに自己紹介をさせようと、エリザベスが背中を軽く叩き、合図を送っている。

「お初にお目にかかります。ブラン子爵家が長女、ルイーズです。どうぞお見知りおきくださいませ」

 ルイーズは彼らの様子から、自分よりも身分が相当上だと判断したようだ。淑女科に在籍していた際に、徹底的に学ばされた王族に対する綺麗なカーテシーを披露するルイーズ。侍女科に移ってからは、自分が仕えることになる貴族家の主に対するカーテシーを猛練習していたため、不安ながらも身体が記憶していることを信じて、王族に対するカーテシーを行ったようだ。貴族とは面倒だが、ここで間違えれば紹介してくれたエリザベスに迷惑がかかるのだ。ルイーズも、そのことが頭を過ぎったために緊張しているのだろう。

 その様子を見ていたエリザベスは、上手にできた妹を褒めるかのように微笑みながらルイーズの背中をさすった。

「ルーちゃん、こちらの方から紹介するわね。こちらはリオン・クレメント様、辺境伯家の御子息で、レアのお兄様よ」

 銀色の髪に、紺碧と紫を混ぜたような夜空色の目をした美丈夫だ。先ほど怪我の手当てをしたときには、それどころではなかったのだろう。どうやら怪我の手当てをした相手だとは気づかなかったようだ。そして、リオンと目が合うと、ルイーズは目の色に見惚れてしまっているようだ。
「レアさんの……、先ほどは、急に肌に触れてしまい、大変失礼いたしました。その後、傷の具合は大丈夫でしたか?」

「ああ、先ほどは手当をしてくれてありがとう。ガーゼを当ててくれた後、すぐに止血したから大丈夫だ」

「そうでしたか。それは良かったです」

 会話が終わった後も、中々ルイーズから目を離さないリオンに、周りは戸惑っているようだ。そこで、エリザベスは注意を引きつけるべく、咳払いをした。それに気づいたのか、リオンがルイーズから目をそらした。
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