会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 憮然としたアーロンはそう言ったので、私はほっと安心した。罪のない赤ん坊に関しては、私も彼と同じ思いだった。

 何度もこの手に抱いたあの子を、寒空の中に放り出すなんて、とても出来ない。

「私も……作り話を、すんなりと信じた訳ではありません。彼女は旦那様から頂いたという、家紋入りの手紙を持っていました。あれはどのように手に入れたのでしょうか?」

 アーロンはクウェンティンの方向を見て頷いたので、今まで壁際に立っていた執事は私へ言った。

「……キーブルグ侯爵家の家紋入りの便箋は、貴族専門の業者に特別に頼んでいます。だから、そこから外部に流出することは、まず考えられないでしょう。顧客の信用問題に関わります」

「偽装か?」

「あまり、考えられないことですが、我が家の使用人が流したか……」

「どうせ、ヒルデガードだな。兄の俺が言うのもなんだが、あいつは本当に碌でもない弟だからな」

「あ……」

 ……私は口を両手で押さえた。

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