会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 死んでしまえば、もう話すこともわかり合う事も二度と出来なくなってしまう。

「アーロン。お願いですから、たった一人の弟を殺さないでください。死んだ人は、もう二度と戻らないのですから。血の繋がった弟を殺してしまって、貴方に未来に後悔して欲しくありません」

 言い終わってから食堂はしんとして静かになり、私はなんだか急に恥ずかしくなってしまった。

 若い時からアーロンは軍人として生きていた訳だから、殺す殺されるの世界に生きていたと思うし、子どもじみた説教をしたと思われてしまったかも知れない。

「……わかった。ブランシュの言う通りにしよう。ありがとう。俺の今後も、考えてくれて」

 アーロンは、大人だ。

 私はこの時、そう思った。自分とは違うけれど、私の意見を受け入れ、肯定してくれる。

「いえ……差し出がましい真似をして、申し訳ありませんでした」

「謝らなくて良い。そろそろ城へ行く。ブランシュは、ゆっくり休んでいてくれ。クウェンティン。妻を頼んだぞ」

「かしこまりました」

 時計を確認してからアーロンは慌ただしく出勤し、澄ました顔をしたクウェンティンに私は聞いた。

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