会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 けれど、こうして生々しい肉欲を感じさせるような熱い視線で間近で見つめられ、男性にまったく慣れていない私は怖じ気付き、涙目になり、走って逃げ出したくなった。

 確かに早く再婚はしたいはしたいけど、初対面に近い状態でこんなにも欲望丸出しで迫る人は、絶対に無理……!

 出会いを求めて男性に話し掛けられたいとこんな恰好をしておいて、何を身勝手なと思われる言い分かもしれないけれど、やはり再婚するならばお互いに無理せず分かり合えるパートナーが良いわ。

 踊ってもいないというのに限界を迎えた私が、爛々とした目つきで手を握るモラン伯爵へと断りの言葉を口にしようとした瞬間……まるで突然の落雷のように、会場を震撼させる大声が響いた。

 その声があまりに大き過ぎて、何を言ったかは判然とせずに私にも聞き取れなかった。

 誰の声……夜会の中で大声を出すなんて、何があったのかしら?

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