会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 距離が近く街灯りが絶妙に見えて、そこまで暗くなく、川面には小さな星のような無数の灯りが散っていた。

 恋人たちが愛を語らうような……そんな雰囲気のある場所だ。

 私たちのような、よく分からない理由で結婚した夫婦には、あまり似合わないかもしれない。

「ブランシュ……どうだった? 元気がないようだが」

 隣を歩くアーロンは、心配そうに私に聞いた。彼はとても優しい。

 アーロンは優しいけれど、必要あって結婚しただけで、別に私を愛している訳ではないと思うと、胸が張り裂けそうになった。

 そうよ……私はアーロンのことを、愛し始めていたから。

「旦那様……キーブルグ侯爵家を継ぐための条件には、私と結婚することも含まれていますか?」

 唐突な私の言葉に、アーロンは驚き目を見開いた。私がそんなことを言い出すなんて、思いもしなかったに違いない。

「待て……何故、ブランシュが、それを知っている?」

 唖然としたアーロンがそう言った時、私の心の中にある張り詰めていた糸が切れてしまった。

 ああ……やっぱり……やっぱり、そうだったんだ。

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