会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 それは、俺自身だってわかっていた。爵位を受け継ぐ嫡男で貴族であるならば、こなさねばならない面倒くさい事だって。

誰もに見透かされていた。ただ、背負っていた責任から、逃げていたことを。

「あの子と結婚したいなら、キーブルグ侯爵家を継げって?」

「いいや、ああいう良い血筋の見目の良い貴族令嬢を娶りたいのなら、お前は彼女に選んでもらわなければいけないということだ」

「……え?」

 思ってもいなかった事を聞き俺は驚いた。

 ブランシュは今の時点でも、可愛くて気立ての良い貴族令嬢だ。

 彼女が社交デビューをすませて求婚者を募ることになれば、男たちが我もと群がるだろうことは簡単に想像出来る。

「おいおい。雨のように降ってくる縁談の中で、今のお前のような、何も出来ずに何も持たない男が選んでもらえるとでも思って居るのか。その名前を見ただけで、姿絵を捨てられてしまうだろう」

「……脅しているのか?」

 ……そんな良くわからない理由で、俺が勉強を真面目にしようと、決心するとでも?

 単純に動くと馬鹿にされたと思い俺が睨み付けても、祖父は楽しそうに笑うだけだった。

< 149 / 198 >

この作品をシェア

pagetop