会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 ブランシュは可愛かった。もし、初対面で婚約者として会えたならば、俺は喜んだだろうと確信してしまうくらいには。

 祖父は思惑通りになったと思ったのか、にやにやと笑って頷いていた。

「……あの子の父親に、先に話をつけてやろう。その代わり、お前は将軍になれ。それが結婚の条件だ」

「え! ……無理だよ!」


 キーブルグ侯爵家は代々軍門の家系だ。かくいうこの祖父も若い時には将軍職を務め、父だって軍部の要職に就いていた。

 だが、軍の頂点、将軍になるのなら……どれほどの努力を、必要とするのだろうか。

「アーロン。あの子と、結婚出来ないぞ」

 脅しつけられるように祖父にそう言われて、俺はそれ以上は何も言えなくなった。

ーーその時の祖父との約束は、十年後に無事に守られた。

 ブランシュの父スレイデル伯爵は、亡くなった祖父との約束を守り、縁談を打診すれば娘ブランシュを俺の妻にするとすぐに頷いてくれたのだから。





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