会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 なんでも、私を見てくれた医者の彼は、元々は先祖に仕えていた従軍医の家系らしい。アーロンとは旧知の仲でそんな関係だというのに、全く遠慮しないのだとか。

 アーロンから話を聞きながら朝食を取っていると、私は彼が軍服を着ていないことに今更気がついた。

 これまで夫は、戦後処理などが大変で、日中は城で仕事をすることが多かったのだ。

「あの……アーロン。もしかして、今日は休日ですか?」

 私がそう聞くと、アーロンは苦笑して頷いた。私は彼が登城すると思い込んでいたし、それを彼も悟ったのだろう。

「そうだ。帰って来てからというもの、仕事が終わらずに留守がちになり、すまなかった。夫婦らしいことも出来ずに、誤解を生んでも仕方なかった」

「いえ。そんな……アーロンは、大事な役目があるもの。忙しかったというのも、仕方がないわ」

「それで、ブランシュ。今日は俺と町歩きしてくれないか」

 少々緊張した様子でアーロンは切り出し、私は驚いた。

「まあ……町歩きを?」

 そういえば、私たちは会えないままの結婚式から一年、夜会には一緒に出たことはあるけれど、町歩きなんて一度もしたことはなかった。
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