会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「何。エタンセル伯爵夫人に暗殺者を送られようが、クウェンティンが守ってくれるだろう。クウェンティンの方が強いからな」

「旦那様」

 楽しげにそう言ったアーロンを、窘めるようにしてクウェンティンは彼の名前を呼んだ。

 どういう事かしら? 彼は確かに普通ではない知識を豊富に持っている。水に落ちても沈まない方法……それに、奴隷商が心を折る方法も?

「……クウェンティンは、実は暗殺者として育てられたんだ。だが、それが本業になる前に俺がその組織を壊滅させたので、ただ強くて知識豊富な賢い子が残った。だから、俺が邸に連れて帰ったんだ」

「暗殺者……? クウェンティンが?」

 私は近くに居た執事を見上げた。若くてきっちりと仕事をこなす執事……確かに、無表情が標準で、不思議だった。

 ……まるで、彼には普通の感情がないみたいで……。

「いえ。まだ誰も、殺してませんよ。暗殺者候補だったんです。攫われた子どもたちが、殺す寸前までを訓練するんです」

 さらりと伝えられた言葉に、私は喉が詰まりそうになった。子どもが、攫われて……殺すための技術を学ぶの……?

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