会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「殺す寸前で止められるので、クウェンティンは凄いんだ。あんなにも候補者が居たのに、生き残った子は少なかった」

「旦那様。誤解を招くような事を、言わないでください。奥様。僕は誰も殺してません。ですが、旦那様と奥様の命令であれば、仕事と割り切ってさせていただきます」

「駄目よ!」

 暗殺をしたことのない暗殺者候補だったクウェンティンは、仕事であれば別に出来るとあっさり言い放った。

「奥様?」

「殺しては駄目よ。だって、その人にも……私みたいに、あの人さえ死ななければって、思って居る人だって居るかもしれないもの」

「ブランシュ……」

 私はお母様が死ななければって、ずっと思って居た。アーロンだってそうだ。アーロンは帰って来てくれた。これは、特殊な事情のある奇跡で、奇跡はそうそう起こらないから奇跡だった。

 ここ一年アーロンが死ななければって、私は思い続けていた。ずっと。

 アーロンさえ居てくれれば、こんなに苦しまなくてすんだのにって。

「……いや、今日誰かを殺したりしない。安心してくれ。だが、はっきりと言いたいことは言わせて貰う」

「旦那様。いらっしゃったようです」

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