会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 クウェンティンは使用人の一人から耳打ちを受けて、アーロンに伝えた。誰かを訪問するには早い時間に思えるけれど、私たちは思ったよりも話し込んでしまっていたのかもしれない。

 アーロンに視線で合図されて、私は頷いた。

「ええ。同席しますわ。私の義母と義妹ですもの」

 私も立ち上がり、準備をするために私室へと戻った。


◇◆◇


「お久しぶりです。義母上。それに、ハンナ嬢」

 アーロンは私を伴い客室に現れ、作法通り座っていた義母と義妹ハンナは立ち上がった。彼が着席を進め、私も隣に座った。

「まあ……無事にお帰りになられて、めでたいことですわ」

 お義母さまは扇を広げ、私と彼を交互に見ていた。義娘の私を見るにはいつも通りだったのかもしれないけれど、私の夫アーロン・キーブルグ侯爵を見るには、少々不躾だったようだ。

「ああ。こちらにお二人を招いたのは、聞きたいことがあってね」

 それまで友好的な態度だったアーロンの声が急に低くなったので、二人は驚いたようでビクッと身体を動かしていた。

 なんだか不思議な気分がした。だって、私はいつも……彼女たちにそうされる方だったもの。

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