会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「お前……さっさと殺しておけば良かったよ」

 吐き捨てるように言ったアーロンの言葉を、ヒルデガードは鼻で笑った。

「ふんっ! 何を今更、先に地獄を見ろ!」

 私はアーロンが青い顔をしている事に気がついた。そして、彼の背中に赤い血が流れているのを。

「アーロン!!!」

 私の悲鳴を聞いて、アーロンは眉を寄せて言った。

「わかっている。大丈夫だ。ヒルデガードくらい、怪我をしていても殺せる」

 安心させるために言っているとわかっていた。背中からは大量の血が流れ、ヒルデガードの手には血に塗れた剣を持っていたからだ。

「あーあ。兄上。不敗の軍神も、背中を刺されて死ぬとは……軍人としては、一番不名誉な死に方ですね」

 ……なんてこと。私が殺さないでと言ったから……ヒルデガードは殺すべきだと、アーロンもクウェンティンも何度も何度も言ったのに!

「背中の傷など、見せなければ意味もない……」

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