会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「……ブランシュ? 待て……! 慣れない君が持つと、怪我をしてしまう。危険だ」

 長剣はすらりと鞘から抜けた。思ったよりも、それは重い。アーロンの心配はもっともだ。

 私はこれまで、こんな武器を持ったこともないのだから。

 けれど、私は震える両手で、それを持ち構えた。その時に見えたヒルデガードの顔は、真剣に思えた。そうすると、彼は少し兄のアーロンに似ているかもしれない。

 流石は、血を分けた兄弟なのね……アーロンは常にこの弟を殺さなければと言っていたけれど、その理由が、今では私にもわかる。

 ヒルデガードは、もう救われない。どんなに私たちが言葉を重ねたところで、彼は納得しない。

 幸せの定義が違うのだ。血が繋がっていようが、離れるしかない。

 望んでいるものが、根本から違う。自堕落な生活を送りたい浪費家のヒルデガードを養うくらいならば、私たちは領地の税率を下げた方が良いと判断するだろうし、世の中のためだわ。

 殺すか、捕らえるか……二度と会わないように勘当して追放するか。

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