会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「はははっ……手は震えていますよ。可哀想に。義姉上。俺と一緒に幸せに過ごしましょう。兄上は真面目で面倒で融通の利かない嫌な男でしょう」

「……自堕落でだらしなく、不真面目の権化のような男が、勤勉な私の夫に何も言う資格はないわ。現にアーロンが居ない間、キーブルグ侯爵家を支えていたのは私。貴方は何もせずに飲んだくれていただけじゃない」

「はっ……夫婦で心中を選ばれるなら、別に構いませんよ。義姉上。こんな田舎の村で起こったことなど、どうにでもなる。村人全員殺しても良い。キーブルグ侯爵家の権力があれば、その程度……造作もないことだ」

「そんなこと……絶対に、させないわ」

「そのような、弱腰で……俺も軍人キーブルグ侯爵家の者ですよ。姉上。それなりの訓練も受けている。美しい女性を殺すのは、忍びないが、苛々するような口を聞く女は嫌いなので……」

 その時、私が持っていた剣を倒れていたアーロンが素早く動いて取り、私に向かってきたヒルデガードの腹を刺した。

「痛い……! 痛い! 酷いじゃないか。兄上!!」

 道にみっともなくのたうち回る弟の姿を見ながら、アーロンは私の前で座り込んだ。

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