会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 ……私だって、そう思うかも知れない。誰も責められない。私たちは貴族には見えない服を着ていたし、アーロンがいきなり刺されたとしても、完全な被害者であるなんて、事情をわかってもらえないとわからないはずだもの。

 何軒も何軒も扉を叩いては無視されたけれど、私は諦めたくなかった。アーロンの怪我は深くて大きい。こんな事をしている内に、手遅れになってしまうかもしれない。

 けれど、こうするしかなかった。アーロンの怪我を治せるような何か……彼の助けになるようなことをせずには居られない。

「お願いします!! 開けてください! 夫が死にそうなんです!」

 ただ死を待つだけの時間を過ごすなんて、嫌だもの。

 私は近くにある扉をすべて周り、何度も叩いて、開いてくれ助けてくれと回った。けれど誰も出てこない。誰しも考えることは同じなのかもしれない。

 そして、村の外れにある小さな小屋を見て、藁にも縋る思いで、その扉を叩いた。



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